職業:大学のキャリアセンターで新卒〜若年者の就職支援を担当(現役)
資格:キャリアコンサルタント(国家資格)の他、CDA(キャリアデペロップメントアドバイザー)、進路アドバイザー、メンタルヘルスマネジメントⅡ・Ⅲ種など、キャリアと心理に係る多くの資格を取得。
備考:大学卒業後、新卒で銀行に就職したものの1年で退職し、その後5年間で5回の転職を経験。この経験から職業選択の重要性を痛感し、キャリアと心理に関する複数の資格を取得。大学のキャリアセンターに転職しこれまでに多くの求職者サポートに携わる。
※この記事は、キャリアコンサルタント(国家資格)を持ち、現役で就職支援に従事している担当者が解説しています。
転職エージェントは全国に3万近く※存在しており、全て見た上で自分に合うものを選ぶのは不可能です。
※会社数ではなく事業所数。厚生労働省集計結果より(詳細後述)
また、多くの転職エージェントが大々的にPRしている求人数や内定率、定着率など「数字」で表されているものを鵜呑みにすると、実態を正しく認識できない可能性があります。
自分にあった転職エージェントの正しい選び方
転職エージェントが公表している数字にまつわる誤解
まず結論として、転職エージェントを選ぶ際に一番重要なのは、そのエージェントとの【相性】です。
『内定率は高い方が良い』という誤解
筆者の勤務する大学では毎年、厚生労働省(文部科学省)へ「就職内定率」を提出しています。
そして厚生労働省は、この全国の大学から提供されたデータを基に全国の就職状況を公表します。
ちなみに令和5年3月大学等卒業者の就職状況によると、大学生の就職率は97.3%※となっています。
※参照:厚生労働省 令和5年3月大学等卒業者の就職状況(4月1日現在)
実は、就職内定率の計算式は「内定者数÷就職希望者数」で求められます。
<例>
卒業間際で就職が決まっていないくま君が窓口でこんな事を言ったとします。
その際、対応によって内定率が変わる場合があります。
<ケース1:A大学職員>
<ケース2:B大学職員>
結果的に、くま君は卒業まで内定が得られなかったとします。
その結果、A大学の内定率が下がり、B大学の内定率は上がります。
なぜならくま君はA大学では「就職希望者」として扱われ、B大学では「就職を希望していない」として分母から外されるからです。
もちろん大学も転職エージェントも、基本的には求職者を支援する事で内定率を上げようとしています。
ただし不自然に内定率が高い転職エージェントは「何らか強引な方法を使っていないか?」という視点で見る事も可能です。
求人数は多ければ多いほど良いという誤解
保有求人数が多い転職エージェントは、求人数が少ない所よりも優れていると感じるかもしれません。
しかし沢山の求人を保有するという事は、必然的に質の悪い求人が入る確率も多くなります。
そして、転職エージェントがそういった求人にも求職者を紹介をしなければならないケースを考えると、質の悪い求人を多数紹介される可能性もあります。
また、転職エージェントの収益モデルは、企業に求職者を紹介し、採用される事で企業側から報酬を得るという仕組みです。
定着率は入社後の【一定期間】に注意する
定着率とは、入社から一定期間後も働き続けている従業員の割合を表す指標です。
定着率には法律で決められた定義がなく、一定期間についても曖昧です。そのため転職エージェント毎に算出が異なる場合があります。
- A社:定着率98%(入社後半年)
- B社:定着率95%(入社後1年)
上記のような場合、一見A社の方が定着率が高いように見えますが、算出期間を考えるとB社の方が高いとも言えます。
その他気をつけるポイントのQ&A
他にも、転職エージェントを選ぶ際には様々な気をつけるポイントがあります。
内定までの期間は短い方が良い?
通常、転職にかかる期間は3ヶ月〜半年程度と言われています。
就職活動の期間は短い方が良いという人は多いですが、中にはじっくり進めたいと考える人もいます。
『平均転職期間が短い』という事を殊更アピールしている転職エージェントの場合、強引に求人を紹介されたり、内定を承諾するよう強く促されたりしないか注意しましょう。
また逆に「じっくり時間をかけて就職活動したい」と希望した場合、サポートを断られる可能性もあります。
比較サイトが「おすすめ」している転職エージェントは信頼できる?
「転職エージェント おすすめ」などで検索すると、転職エージェントについて書かれた様々なサイトが出てきますが
中にはおすすめの理由が不明確なものもあります。
これは、サイトが成果報酬型広告※を利用しており、商品を強調して紹介することが主な目的の場合があるためです。
※広告経由で商品購入で報酬を得る仕組み
評価が「案件報酬に依存しているのでは?」と思うサイトもありますが、当サイトは個人的な価値観に基づき、本当におすすめできると思う情報を提供しています。
(ただし、これも私の一つの視点なので、他の人には違った評価となる可能性はあります)
筆者がおすすめできると感じている既卒向けの就職サイト・転職エージェントについては下記にまとめています。
転職エージェントの言う「大手企業多数」って本当?
実は「大手企業」という言葉には定義がありません。
そのため、求職者・転職エージェントそれぞれにおいて大手企業の認識が異なっていることが多く
中には「従業員の数が300人以上いれば大手企業」としている人材会社もあります。
「大手企業の求人多数」とアピールしている転職サイト・エージェントは多いですが、捉え方は人それぞれ違う為、それがあなたの想像している大手企業ではない可能性があります。
その為、大手企業という軸で就職活動をしている方は求人票を見て、それが自分のイメージする大手企業と合致しているか、一つひとつ確認していく必要があります。
既卒が「自分に合った転職エージェント」を選ぶ方法
年齢や経歴によって登録すべき転職サイトは違う
実は、年齢や経歴・学歴などによって登録するべき転職サイトは違います。
企業が求人を出す際、年齢や性別などを求人票に記載することは、雇用対策法や男女雇用機会均等法などの法律で禁止されています。
そのため、企業は求める人物像があるにも関わらず、具体的に記述できないジレンマがある場合があります。
同様に、就職サイト・転職エージェントも特定の対象者を想定していますが、それを正確に表現することが難しい場合があります。
ですが「既卒は対象外です」とはハッキリ書けません。
その結果、転職エージェントのターゲット層でない既卒者が登録してしまい、結果が得られないことがあります。
問題なのは自分が対象者ではないのにその就職サイト・転職エージェントを使い続け、就職活動が長引いてしまう事です。
既卒とは学校を卒業して約3年以内の正社員経験の無い求職者を指し、第二新卒は学校を卒業して約3年以内の正社員経験のある求職者を指します。
既卒向けの転職エージェントから選ぶ
冒頭で書いた通り、多くの転職エージェントの中から正確な情報を用いて比較するのは困難です。
既卒向けの転職エージェントは一般向けのものに比べ、キャリアカウンセリングに重点を置いている事が多く、面接練習や履歴書添削などのサポートが充実している所が多いです。
ですので、既卒の方は【既卒に特化した】転職エージェントの中から自分に合いそうだと感じる転職エージェントに複数登録し
最終的に「相性が良い」と感じた転職エージェントをメインに利用するという方法がおすすめです。
就職活動では70%以上の人が2つ以上の就職サイト・転職エージェントに登録している※というデータがあります。
※データ参照:【調査概要】2019年7月16日~7月17日 株式会社ジャストシステム「転職に関するアンケート」 調査対象:転職を経験したことのある男女199名(単一回答)
就職活動は情報戦なので、多くの求人を閲覧する為に就職サイトを、手厚いサポートを受ける為に転職エージェントを複数並行して利用する事が基本です。
また基本的に、転職エージェントを退会する際に引き止められる事はありません。
自分に合った正しい転職エージェントを選ぶ最も確実な方法は、実際に試してみて自身に合うかどうかを確認することです。
既卒におすすめの就職サイト・転職エージェントについてはこちらにまとめています。