職業:大学のキャリアセンターで新卒〜若年者の就職支援を担当(現役)
資格:キャリアコンサルタント(国家資格)の他、CDA(キャリアデペロップメントアドバイザー)、進路アドバイザー、メンタルヘルスマネジメントⅡ・Ⅲ種など、キャリアと心理に係る多くの資格を取得。
備考:大学卒業後、新卒で銀行に就職したものの1年で退職し、その後5年間で5回の転職を経験。この経験から職業選択の重要性を痛感し、キャリアと心理に関する複数の資格を取得。大学のキャリアセンターに転職しこれまでに多くの求職者サポートに携わる。
※この記事は、キャリアコンサルタント(国家資格)を持ち、現役で就職支援に従事している専門家が解説しています。
転職エージェントの事業所は全国に約3万※あるので「一番良いものを選ぶ」のは至難のです。
※厚生労働省発表の事業所数。
多くの転職エージェントは、求人数や内定率、定着率などの「数字」を強調して宣伝していますが、この点ばかり注目していると実際の状況を正確に理解できない可能性があります。
誤解しやすいポイント
自分に合った転職エージェントを確実に選ぶ方法
転職エージェントが公表している数字にまつわる誤解
最初に結論を述べると、転職エージェントを選ぶ際に最も重要なポイントは、そのエージェントとの「相性」です。
内定率が高い=満足度が高いという誤解
『数字は嘘をつかないが、数字で嘘をつくのは簡単』という言葉があります。
以前、第二新卒に特化した有名転職エージェントが「内定率を誇張していた」とニュースになりました。(企業名は伏せます)
会社の活動や実績を実際よりも著しく優良に見せかける表示や広告をしていたとして先月、消費者庁は就職支援サービスなどを運営する「●●」に対し、景品表示法に基づいて再発防止などを命じる措置命令を行いました。
<中略>
消費者庁によりますと「●●」はウェブサイトやイベントなどを通じて、新卒者や求職者向けの就職支援サービスを行っていて、「内定取得率95.8%」などと広告表示していましたが、これは特定期間の最も高いデータを会社が任意に算出し利用したものだったということです。ーNHK
報道では『内定率95.8%の記載にも関わらず、実際は15%程度(※2021年度)だった』と報告されていました。
筆者は転職エージェントではなく大学で就職支援をしていますが、内定率はグレーな部分も多いと感じています…。
大学における就職内定率は、以下の計算式で求められます。
内定者数÷就職希望者数
ただし「就職を希望しているかどうか」の判断には幅があるので、求職者とどのような接し方をするかによって判断が変わる可能性があります。
例えば…
卒業間際で就職が決まっていないくま君がこんな事を言ったとします。
くま君の本音としては『就職したかったけれど内定が中々出ないので少し疲れてしまった…』という意味で、本当に就職活動を諦めた訳ではなかった場合
対応する人によって内定率が変わる事があります。
<ケース1:A大学>
<ケース2:B大学>
最終的に、くま君は卒業までに内定を獲得できなかったとします。
その結果、A大学の内定率は低下し、一方でB大学の内定率は上昇します。
これはくま君がA大学では「就職希望者」としてカウントされる一方、B大学では「就職を希望していない」として分母から除外されるからです。
もちろん、大学も転職エージェントも、基本的には求職者をサポートして内定率を向上させようとしていますが
内定率が不自然に高い転職エージェントに対しては、「何らかの強引な手法を使用していないか?」という見方をする事もできます。
求人数が多い所は少ない所よりも優れているという誤解
多くの求人を持っている転職エージェントは、一見して優れているように感じるかもしれません。ですが単に求人数が多いだけだと、その分質の低い求人も多く含まれている可能性があります。
そして転職エージェントは、質の低い求人に対しても求職者を紹介しなければならないため、求人数が多いことによって質の低い求人を多く紹介される可能性も考えられます。
転職エージェントのビジネスモデルでは、企業に求職者を提案し、求職者が採用された際には通常、年収の30%が報酬として支払われます。
例えば、求職者の年収が400万円であれば、成功報酬として120万円が発生します。
定着率は単純に比較できない
定着率とは、入社してから一定期間経過した後もその企業で働き続けている従業員の割合です。
定着率には厳密な定義がなく、一定期間の基準も明確には統一されていません。そのため、転職エージェントごとに一定期間の捉え方が異なることがあります。
- A社:定着率92%(入社後半年)
- B社:定着率89%(入社後1年)
上記のような場合、一見A社の方が定着率が高いように感じますが、期間を考慮するとB社の方が高いとも言えます。
他に気をつけるポイント
他にも、転職エージェントを選ぶ際には、考慮すべきさまざまなポイントが存在します。
就職活動にかかる平均期間は短い方が良い?
通常、転職にかかる期間は3ヶ月〜半年程度と言われています。
就職活動の期間は短い方が良いという人は多いですが、中にはじっくり進めたいと考える人もいます。
特に第二新卒で『現職を続けながら就職活動をする』という場合、転職活動の期間は長くなる傾向があります。
『平均転職期間が短い』とアピールする転職エージェントの中には、求人の強引な紹介や内定の強制が行われていないか注意が必要です。
逆に、ゆっくりと時間をかけて就職活動を進めたい場合、その希望が受け入れられず、サポートを断られてしまう可能性も考えられます。
比較サイトでおすすめされている転職エージェントは信頼できる?
「転職エージェント おすすめ」などで検索すると、多くの転職エージェント比較サイトが出てきますが
中にはなぜ「おすすめ」しているのかわからないサイトもあります。
これは、そのサイトが広告を利用しており、商品を紹介して広告費を稼ぐことが主な目的の場合があるためです。
(当サイトは個人的な価値観に基づき、本当におすすめできると思う情報を提供していますが、これは私の一つの視点ですので、他の人にとっては異なる評価があるかもしれません)
筆者がおすすめできると感じている第二新卒向けの就職サイト・転職エージェントについては下記にまとめています。
多数の受賞歴がある転職エージェントは優れている?
転職エージェントの広告でよく「受賞歴多数」などとPRしているものを見かけます。
もちろん多くの受賞歴があるのは一つの評価になりますが、そういった賞自体がかなり世の中に溢れており、賞の信頼性がどこまであるのか不明な部分もあります。
受賞歴は一つの評価基準ではありますが、求職者の個別のニーズや希望に合ったエージェントを選ぶ際には、受賞歴だけでなく、さまざまな要因を考慮する必要があります。そのため、受賞歴があるからといって、必ずしもその転職エージェントが優れているとは言えないのです
「大手企業多数」に対する認識のズレ
「大手企業」という言葉には、実は明確な定義が存在しません。
大手企業という言葉は、よく使われるにも関わらず、求職者・転職エージェントそれぞれ認識が異なっていることが多いため、ズレが生じてしまいます。
一般的には「知名度の高い企業=大手企業」と見なされることが多いと考えられています。
ただし「大手企業」という言葉はそもそもが具体的ではないため、単に大手企業というキーワードだけで就職活動を進めていくと、自分が探している企業には出会えない可能性が高いです。
したがって「大手企業」という求人を紹介された場合は、求人1つひとつを詳細に確認し、自身の考えている大手企業と内容が一致しているかどうかを注意深く見ていく必要があります。
既卒が「自分に合った転職エージェント」を選ぶ方法
年齢や経歴によって登録すべき転職サイトは違う
登録すべき転職エージェントは、それぞれの年齢や経歴、学歴等で異なります。
企業が求人情報に年齢や性別などをハッキリと記載することは、法的に制約があるため、求人票において具体的な人物像を表現するのは難しい部分があります。
同様に、転職サイトやエージェントも特定の対象者を想定していますが、その対象者を正確に表現することは難しい場合があります。
したがって、「第二新卒は対象外です」と明記することはできないため、第二新卒の方が登録し、結果的に求人情報がマッチしないケースが生じることがあります。
問題は、自身が対象者ではないにもかかわらず、その転職サイトやエージェントを利用し続け、就職活動が長引いてしまうことです。
既卒向けの転職エージェントから相性で選ぶ
冒頭で述べた通り、多くの転職エージェントを正確に比較するのは困難です。
ただし第二新卒向けの転職エージェントは、通常のエージェントに比べて、キャリアカウンセリングに力を入れ、面接練習や履歴書添削などのサポートが充実していることが多いです。
そのため、第二新卒の方は第二新卒に特化した転職エージェントを複数選んで登録し、最終的に「相性が良い」と感じた転職エージェントをメインに利用する方法がおすすめです。」
就職活動では70%以上の人が2つ以上の転職サイト・エージェントに登録している※というデータがあります。
※データ参照:【調査概要】2019年7月16日~7月17日 株式会社ジャストシステム「転職に関するアンケート」 調査対象:転職を経験したことのある男女199名(単一回答)
就職活動は情報戦なので、多くの求人を閲覧する為に就職サイトを、手厚いサポートを受ける為に転職エージェントを複数並行して利用する事が基本です。
また基本的に、転職エージェントを退会する際に引き止められる事はありません。
自分に合った正しい転職エージェントを選ぶ最も確実な方法は、実際に試してみて自身に合うかどうかを確認することです。
第二新卒におすすめの転職サイト・エージェントについてはこちらにまとめています。