職業:大学のキャリアセンターで新卒〜既卒・第二新卒の就職支援を担当(現職)
資格:キャリアコンサルタント(国家資格)の他、CDA(キャリアデペロップメントアドバイザー)、進路アドバイザー、メンタルヘルスマネジメントⅡ・Ⅲ種など、キャリアと心理に係る多くの資格を取得。
経歴:大学を卒業後、5年間で5回の転職(派遣・アルバイト・正社員含む)を繰り返した経験から、職業選択の重要性を痛感。また派遣会社でのコーディネーターとして働きたいと考えていた時期があり、研究の為に約20社の派遣会社に登録した過去を持つ。現在は大学のキャリアセンターで働き、多くの求職者支援に携わる。
紹介予定派遣を利用した場合、多くは期間終了後に正社員など(契約社員などの直接雇用を含む)に移行しますが、中には合意に至らず直接雇用とならないケースもあります。
紹介予定派遣で採用されたにも関わらず、正社員になれないと言われている本当の理由を、これまでに何度も紹介予定派遣を利用した経験のある筆者が経験を通して本音でわかりやすく解説します。
紹介予定派遣で正社員を目指す人の特徴
紹介予定派遣を利用する人々は、以下のニーズを持っていると言われています。
- 実際の職場環境を体験してから正社員になるか決めたい
- 仕事内容、職場の雰囲気、人間関係など、実際に勤務してみないと分からない要素を確認したい
- 就職後のミスマッチを防ぎたい
- 実務経験を重ねながら正社員としてのスキルアップを目指したい
つまり、紹介予定派遣を利用する人は「キャリア意識が高く、自己成長を重視する傾向がある」というのが、社会の一般的な認識です。
紹介予定派遣に対する違和感
ただし、ここで違和感を感じるのが
紹介予定派遣の求人を出しているのは転職エージェントではなく派遣会社という部分です。
紹介予定派遣の求人の多くは、対象が20代〜30代前半となっています。
対して、紹介予定派遣を利用する若い人は、キャリアがほとんど無かったり、正社員経験が無い人も多いです。
例えば、これまでに派遣やアルバイトなどの経験しか無い人が、紹介予定派遣を利用して正社員になれば「キャリアアップ」と言えますが
ここで指している「キャリアアップ」と、世間一般で言われている「キャリアアップのイメージ」を比較すると、少しずれていると感じます。
例外が多い
ただし、もちろん紹介予定派遣を利用して、世間一般でいう「キャリアアップ」をする方もいます。
特に、ある程度の年齢とキャリアを重ねた人を紹介予定派遣で募集する場合、キャリアを重視している事が多く
紹介予定派遣と一言で言っても、実際に自分の応募する企業が何を重視しているのか、どういった場合に正社員(直接雇用)となるのか、基準が変わるので
結局の所、自分が応募しようとしている求人の「過去の正社員登用割合」や、派遣会社から話を聞く事で、企業ごとに個別に判断していく必要があります。
紹介予定派遣から正社員になれない本当の理由
紹介予定派遣を利用して正社員(直接雇用)される人は、常に学び続ける意欲があり、新しい環境や変化に柔軟に対応できる柔軟性を持っていたり、職場での人間関係をスムーズに構築するコミュニケーションスキルが高い人、というイメージを持つ人が多いでしょう。
ただし、正社員になるかどうかは、その企業の考え方が大きく影響します。
正社員になるケースとならないケース
例えば、入社初日から積極的に業務を覚え、積極的に提案を行うAさんと、技術的なスキルが低く、あまりコミュニケーションが取れないBさんがいたとします。
その場合…
①「紹介予定派遣で採用した人は基本的に正社員に移行する」という考えの企業であれば、多少Bさんに難があったとしてもAさんBさんの両方を正社員として採用します。
②「紹介予定派遣でとりあえず採用して、働き方を見て採用しよう」という考えの企業であればAさんのみ正社員になります。
③また、悪質な企業であれば「とりあえず紹介予定派遣で採用するけど、よほどのスキルが無い限りは正社員にはしない」と考える可能性もあり、能力がある程度あっても採用されない可能性があります。
つまり、派遣期間満了後に正社員になるには、個人の能力も大切ですが、企業を個別に判断していく必要があるのです。
企業側はどう考えているか
企業側では、紹介予定派遣を利用して、実際にその人が組織にフィットするかを見極めたいと考えているので、派遣期間を通じて、その人の働きぶりや企業文化への適応力、同僚や上司との相性等を評価します。
企業側から見れば、紹介予定派遣はリスクを最小限に抑えつつ、最適な人材を確保するチャンスでもあります。正社員として長期的に貢献できるかどうかを見極める期間となるため、紹介予定派遣で働く方は、派遣期間中の行動は気をつけておきましょう。
職場環境や人間関係とのマッチング問題
企業側は業務的なスキル以外にも、職場環境や人間関係などがうまくマッチングしているかどうかも重視しています。
例えば、C社の企業文化では、自己主張よりもチームワークが重視され、新しい環境に入った派遣社員が、この文化を理解し、適応する努力を怠ると、チーム内での摩擦が生じやすくなります。
派遣期間の間にこういった問題に適応できない場合、そのギャップが問題となることがあります。
特にコミュニケーション能力は、職場での人間関係や業務の進行の中で非常に大きな役割を果たすため、どれだけスキルが高くても、現在の職場の人間関係に合わないと判断された場合、採用されない可能性があります。
実は派遣社員側から断っているケースが多い
紹介予定派遣はあまりメジャーな採用方法では無いため、「企業ごとに紹介予定派遣での採用をどのように捉えているかが違う」という点を考慮する事が非常に重要です。
また、「紹介予定派遣から正社員になれない」という意見を見かける事がありますが、多くの場合、派遣社員の方から断っているという事も知っておきましょう。
ー参考:厚生労働省「平成29年派遣派遣社員実態調査の概況」
また、筆者はこれまでに2回、紹介予定派遣を利用し、2回ともその企業で正社員になった経験があります。
これは私の能力が優れていたという訳ではなく、その企業の採用方針として「紹介予定派遣で採用した人材は基本的に派遣期間終了後に正社員にする」という考えだった為です。
私は紹介予定派遣を受ける前に、その企業の「派遣期間満了後の正社員以降の割合」を派遣会社に確認しました。
そこで「ほぼ100%が正社員に移行している」という説明を受け、その選考を受けることに決めたという経緯があります。
紹介予定派遣はメリットが多い
とはいえ、紹介予定派遣は「正社員になれない」という可能性があるので、一般的な正社員採用と比べて嫌厭する人も多いです。
ですが、実は紹介予定派遣は大手有名企業など、一般で募集をかけると応募が殺到するような求人が多く、通常ルートでは中々採用されないような優良求人が多く存在します。
この経緯についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
まとめ
紹介予定派遣から正社員(直接雇用)になれない理由を、経験者の視点から本音で解説してきましたが、まとめると以下のようになります。
- 紹介予定派遣はで正社員にならなかった理由として、企業ではなく派遣社員側から断っているケースが多い
- 紹介予定派遣は「正社員を前提」とした採用方法ではあるが、この「前提」の捉え方は企業ごとに違う
- 紹介予定派遣から正社員になるハードルは、本人の能力だけでなく企業ごとの紹介予定派遣の捉え方で変わってくるので、過去の実績など派遣会社に聞くなどして確認する事が大切
- 紹介予定派遣は大手・有名企業や優良企業の求人があり、一般ルートでは中々採用されない求人がたくさんある
結論として、紹介予定派遣で正社員になれない人は、本人の能力の他に、紹介予定派遣に対するハードルが高い企業を選んでいる可能性が高いです。
紹介予定派遣は、あまりメジャーな採用方法ではありませんが、企業の選び方や注意点を知った上で利用すると、非常に労働者にとってメリットの大きな採用方法です。
特に、筆者の利用したテンプスタッフは大手企業の求人や、未経験から利用できるものも多いためおすすめです。